東北医科薬科大学消化器内科

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肝臓グループ

主な対象疾患

肝細胞癌(肝がん)、ウイルス性肝炎、自己免疫性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患(脂肪肝)、急性肝炎・急性肝不全など

肝臓グループでは、各種肝臓病に対して最新の診断・治療に取り組んでいます。以下についての外来・入院加療を専門医により精力的に行っています。肝細胞癌(肝がん)、ウイルス性肝炎、自己免疫性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患(脂肪肝)、急性肝炎・急性肝不全などが主な対象です。

肝がんに対する集学的治療

日本では毎年約3-4万人が肝がんと診断されており、5年生存率は4割程度と予後不良ながんの一つです。根治的な治療がなされても高率に再発するため、肝臓の働きを保ちながら長期にわたり集学的な治療を行ってゆくことが予後改善には重要です

経皮的焼灼療法(ラジオ波・マイクロ波)、カテーテルによる肝動脈塞栓療法、分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬を用いた化学療法、動注リザーバーを用いた抗がん剤の持続動注化学療法などを集学的に行っています。

B型肝炎・C型肝炎などの慢性肝疾患・肝硬変が原因で発生する肝がんは、がんの治療とともに背景にある肝臓病の治療が、より有効な治療の選択・再発予防に大きく影響します。当グループでは早期のがんから進行がんまで背景の肝臓病の治療を含めて包括的に治療に当たっています。

慢性ウイルス性肝炎に対する抗ウイルス療法

日本では肝がんの原因はその半数以上がウイルス肝炎であり、ウイルス肝炎の制御は肝がんの最も効果的な予防です。肝がんの治療においても肝臓の働きを良好に保つことは予後改善に極めて重要です。

これまで難治とされていたC型肝炎治療は大きく変わり、インターフェロンで治療がうまくいかなかった場合でもほぼすべての患者さまが治療できる時代となりました。抗ウイルス薬を最短8週間内服することで98%以上の方がウイルスを排除できます。C型肝炎は全身の臓器に影響し、腎臓病・免疫疾患・糖尿病などを悪化させることがあり、ウイルス排除により肝がん発症の危険を減らすだけではなく、様々な合併症が改善して体調がよくなることもあります

B型肝炎ウイルスの排除は困難ですが、核酸アナログの内服・インターフェロン治療で慢性肝炎を鎮静化させて進行を抑え、肝がんを予防することが重要です。B型肝炎に感染した患者さまには治療の必要ないキャリアの方も多いですが、長期経過におけるB型肝炎の病態は複雑で、その診断・治療のタイミング・治療法の選択は慎重に行う必要があります。当グループでは肝生検による病理診断や必要であればウイルスの遺伝子配列を研究室で調べて方針を検討しています。すぐに治療が必要ない患者さまは、関連の病院・クリニックと連携して経過観察を行っています。

自己免疫性肝疾患の診断と治療

免疫異常が原因で発症する肝臓病には、自己免疫性肝炎・原発性胆汁性胆管炎・原発性硬化性胆管炎・IgG4関連胆管炎などがあり、これらの指定難病の診断・治療を行っています。難病の進行によって肝移植が必要になった際は移植施設(東北大学総合外科)と連携して診療にあたります

非アルコール性脂肪肝疾患(脂肪肝)の診断と治療

先進国において脂肪肝は人口の数割に及ぶ頻度の高い病気ですが、脂肪肝の方が亡くなる原因は心臓病・脳卒中に次いで肝臓病です。脂肪肝の10-20%は病状が進行して肝硬変・肝がんを発症し、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)と呼ばれています。診断には肝生検による病理診断が必要です。現時点で特効薬はなく、減量が主な治療となりますが、当グループでは正確な診断とともに、体重を減らす栄養療法に加えて2型糖尿病・脂質異常症などの合併症治療を行い肝機能異常の改善を目指しています